飲食店で失敗しない職場の選び方について(経営編)【その15】2店舗目を出す心構え

2店舗目を出す心構え

単一の店舗が複数店舗になる時のお話をします。
晴れて、あらゆる試行錯誤や努力が実を結び、売上も利益も出るようになりました。それはつまり第三者から見ても素晴らしいお店ということです。どこからともなく2号店を出店してみませんかというオファーが来るようになります。

このとき、いまの1店舗が料理も内装もキャパ限界で窮屈を感じていたり、1号店を成功させた自信や自負、野心や挑戦心など、さまざまな理由から2号店の出店を考えることもあると思います。

ここでお伝えしておきたいことは、オーナーが単独で出店している形態から2号店の出店をするときは、1号店(本店)、2号店の両方に、新たに店長をたてる必要があるということです。
どちらかをオーナーが運営して、別の店舗に店長を立てるとうまくいきません。

天地の差

オーナーと店長には行動力において天地の差があります。店長が悪いとかそういう話ではありません。オーナーが「人間離れ」してるという話です。追い込まれ感が違うと申し上げればよいでしょうか。

たとえば、赤字が続く場合、オーナーはそれをどうにかできなければ金銭的に借金を背負い、果ては破産ですが、店長であれば無借金で別の店舗を探すことができます。
黒字に対する貪欲さも、オーナーなら、成功すればどのように運用するにせよ全て自分の利益にできますが(投資用にまわすことが多いです)、店長なら給料のアップ、ボーナスのアップまでです。給料やボーナスのアップはもちろん嬉しいですし頑張るものですが、それは「人並み」「人並み以上」に頑張るというものです。
オーナーの場合はそうではなく、黒字を出すために必要とあれば、時に「人間をやめるような」異次元の頑張りをします。

これらは、スタッフへ与える影響力も違ってきます。オーナーは気合で煮えたぎった最終責任者ですから、その熱い情熱やヴィジョンを共有できたら高揚もするし、自然に従おうともします。それと比べれば、店長は「よい仲間」であり、人によっては「とって変わりたい」ポジションです。スタッフを従わせるにも、波風をたてないよう一苦労も二苦労もしてます。

シフト管理は人件費ついての章でも申し上げましたが厳格にやるほうがいいに決まっています。しかし上記指導力の差から、オーナーなら絶対ないような甘い対応も店長は人間関係からせざるを得ない場合もあります。

ほか、お店の営業というのは、毎日なにかしらイレギュラーが起こるものですが、そういうときの対処のスピードが格段に違います。

ここまで読んでいただければおわかりになられたと思いますが、どちらかにオーナーが入って「人間をやめるほど」頑張るほどに、皮肉なことに、それについていけない「人並みの」店長がオーナーと比較され続け、晒されていくのです。そして最終的には同じ看板の店なのに業績が食い違ってきて紛糾します。

オーナーの覚悟

オーナーは2店舗目を出店するなら、どちらの店長にもならず、引っ込んで黒子となり、二人の店長の育成に血道をあげるべきです。2店舗目を持った瞬間、オーナー運営のお店は一つもなくなるのです。オーナーが手作りの味を出すのが楽しみであるのなら、それもなくなります。まずは、それでも2号店を出店したいのか、その覚悟を持てるかどうかよく考えられることが大切です。

そして、その覚悟があると決まったならば出店です。そこからは常に平等です。新店のほうが赤字だから新店に物理的なエネルギーを割くことはある意味当然ですが、それでも本店との意識配分は50:50です。どちらの店舗も平等に扱ってくれているという安心感が大切です。

どちらの店長にも教えて任せたら安易に口出しをしません。ちょっと違うなと思っても任せた以上は我慢です。任せておいて口出しすると、判断のできない人間に仕上がります。自信がついてくれば、ちょっと暴走したり、自信過剰になったりする時もでてくるかもしれませんが、大きくずれない限りは忍耐です。成長の過程だと思うことにします。そのうえで店長が困ったら相談に乗ります。

この段階のオーナーのお仕事

売上も2倍になるので、数字の把握が今よりも大事になってきます。原価は取引量が増えるので一度見直しできるチャンスです。あらたに数パーセントのコストダウンができるかもしれません。全スタッフの把握に努めます。お店に行く時に知らないアルバイトがいたら名前と顔を覚えます。あとは広報です。広報ができるスタッフはこの段階ではオーナー以外にいません。

無料のSNS戦略のほか、ホームページ製作、有料サイトの検討、来店ポイントの検討も取り掛かるべきです。

経理業務も顧問の税理士と話し合って、できるだけ負担のない方法を構築します。

ここまでやれば、3店舗も4店舗も5店舗も同じです。この頃から店舗スタッフだけでなく、自分の右腕になってくれる本部スタッフの必要性を感じ始めます。

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