飲食店で失敗しない職場の選び方について(経営編)【その18】現場に入る

現場に入る

複数店舗を出店するときは、それぞれ店長を立てるべきと申し上げました(→経営編【その15】2店舗目を出す心構え)。店舗の業務は店長に任せます。オーナーは複数の店長の統率です。オーナーが見えているビジョンを教え語り共有し、そのビジョンへと導くのがオーナーの仕事です(→経営編【その16】3店舗目から)

オーナーにとって現場に入ることは必要でしょうか

これは、この経営編の【その1】で書いたように、現場に入りすぎているなら減らしましょう。全く入っていないというのなら入りましょうというのが答えです(→経営編【その1】美味しいと利益が出るのはノットイコール)

現場に入りすぎている場合

現場に入りすぎている場合とは、オーナーのマネジメント業務が足りておらず利益が出ない状態のことです。現場に入るボリュームを抑えて、仕入れの見直しや広報活動、組織作りなど、売上と利益が拡大することにもっと力をいれます。現場にいる店長たちができないことをやります。これらは経営編【その2】から【その14】まで触れてきました。

全く入っていない場合

これが、この章の本論です。全く入っていない場合というのは、オーナーと現場のあいだに意識のギャップがある状態のことです。このギャップがあるために、オーナーの意向は現場からみれば上から降ってくるストレスであり、活気を奪いじりじりと店舗が萎縮して売上が出ない場合です(→採用編【その6】営業方針が変わる)。このギャップは、オーナーが創業者か他所出身か、他業種出身で異なります。

創業者であれば、マネジメント業務に専念するために全く現場に入らないようになっても、ビジョンをみせる力があればすぐにはギャップは生じません。もちろん現場に入っていた方が判断の正しさの精度はあがりますが、それは別論です。

しかし他所からオーナーになった場合は、創業者のような血の滲むような道のりも歴史もないのであり、現場との繋がりはありません。それでも、そのオーナーが飲食出身ならある程度は一目おかれます。また「指示出しのさじ加減」をわかっているのでトラブルは起きにくいです。ただしさじ加減があるために、実行力は弱くなります。従って現場に入って繋がりを強化し、実行力を強化すればよいことになります。

他業種出身も、飲食業に似てるともいえるサービス業や製造業から、頭脳労働である金融業、ITまでいろいろあります。頭脳労働だけの職場からやってくるほどギャップがあります。現場からみれば、頭だけで解決しようとするように見えるからです。高い学歴しかいない職場から来た場合もギャップがあります。経営経験の有無ももちろん左右します。
オーナーと現場にギャップがあるほど、現場は言うことをききません。無理に強行しようとすれば崩壊します。しかし放置しておくとビジョンがないゆえにモチベーションもあがらず利益も出ません。八方塞がりです。

店長統率者の勧誘?

この状態を改善するためにまず思いつく手法は、店長たちを統率できるクラスを勧誘してくることです。しかし勧誘の金銭的コストはかかるなか、そもそもこのクラスは数が少ないので勧誘できるか不透明です。そして無事勧誘できたとしても、オーナーがハンドルできるかです。
オーナーがハンドルできなければ、現場と心が通じていく分、オーナーと意見が対立していくようになります。対立が深まって統率者が辞めることになったら、店長はモチベーションを落としたり、オーナーを恨んだり、統率者についていってしまいます。こうして経営は再び乱れます。その中、次の統率者を見つけてこなくてはならなくなります。

自分が現場に入る

オーナーは現場に入って皆と仲良くやれれば、自然とギャップも埋まり、適切な落とし込み力を身につけられるのではないかと頭の中では察していると思います。
では何がブレーキになっているかと言うと、長年頭脳労働でやってきたので自分に肉体労働はあわない今から年若いスタッフたちと一緒に働けない経営者としての威厳を落とすのではないかなどです。
もうひとつは、周囲の反対です。

前者のブレーキは自分で答えを出すよりほかありませんが、周囲の反対はその通りで、現場に入るにはそれなりの覚悟が必要です。周囲がなぜ反対するかというと、これまでのギャップから、今度は中にはいって現場をひっかき混ぜるのではないかと危惧されているからです。そうではないことを示す必要があります。

シフトに入ると決めたら、必ず入る

ひとつ、シフトに入ると決めたら、必ず入ることです。大事な打ち合わせが入ったからと決まったシフトを直前にキャンセルすることは、店長や現場からみれば、最初からシフトに入らないでくれと思われます。会社の最重要事項と心に決め、決められたシフトを墨守することです。

初心者として一所懸命働く

もうひとつ、現場は経験による上下関係があります。店長より古株のバイトスタッフがいる場合、その方が上にみられることもあります(→下調べ編【その3】社員で入社するかアルバイトで入社するか)。オーナーといえど現場に入れば初心者です。一番下のランクから始まります。一番下が先輩スタッフに意見するなど10年早いもので、一番下として仕事を教えてもらいながら一所懸命働きます(→採用編【その1】初出社心得!)

平等にシフトに入る

最後に、複数店舗があれば週毎でも月毎でもよいので、平等にシフトに入ることです。どこかの店舗だけに偏ることは、不公平感を招くので厳に注意します。

でも、これだけです。威厳は落ちません。むしろ陰で立派と評されることになります。飲食はホールであれば一年もやっていれば大体の仕事は覚えます。キッチンはそうはいきませんが、雰囲気はよくわかります。その間、新しい後輩も入ってきます。肉体労働がわからないというのも案ずるより産むが易しで、慣れると経営のよい刺激になります。

現場に入り続けるほどに

オーナーが現場に入ると得られるメリットは、現場の状態がわかるということです。それまで遠く潜望鏡で見ていた小さな島は、近づいていると港があり町があり山がありまた人々の生活があり驚いたという感覚です。

現場に入り続けるほど、いろいろなことがわかってきます。現場の清掃状態がよくわかります。キッチンの状態がわかります。お客様のニーズもわかります。レジの手間もわかります。スタッフの人間関係もわかります。店長の苦労もわかります。長時間労働のきつさや人件費の適切なコストもわかります。新店を出す出さないのヒントもあります。そこに知るべき情報があるのです。

オーナーがこういう状態になってくると、スタッフに何か物を言っても「わかっている人」からの会話であり、ギャップはありません。むしろ一目置かれていますので「あの人がいうなら」と意見が通じやすくなります。また指示そのものの正しい確率があがります。間違っていても正しく修正することができます。

続けるほどにやめようとは思わなくなります。

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